油絵における大事な描き込みと不要な描き込み

こんにちは。画家の梅山です。

まだ製作途中の「空へ続く山道」という作品を描く中で、具象絵画における描き込み(細かい部分の描写)について改めて考えることがありました。今回はそのことを書いてみます。

大事な描き込みと不要な描き込み

人物画や風景画では、細部まで描き込むことが作品の魅力を大きく引き上げます。

その細かい部分の描写は、作品にとって重要なものとそうではないものがあると考えます。

大事な描き込みって?

作品の主題となるようなモチーフそのものや、描きこむことで説得力を得られるような場面の描き込みです。

主題となるモチーフが形や色彩として的確に描写されていると、全体を見たときに「何が描かれているのか」が伝わりやすくなります。
それが結果として説得力につながりますし、完成度が高ければ、その技術そのものに感心し、純粋に楽しんでもらえる要素にもなります。

一方で、大事ではない描き込みというのは、作品のテーマから外れる部分や、強い注目を必要としない箇所の細かな表現を指します。

「アルル 光の門」─ 右に見えるおうちの2階のベランダ部分は最低限の形が分かるように描いて細かく描きこんでいません。

なぜ描き分けが必要なのか

自分の作風、すなわち超写実でもないし抽象でもないこの具象絵画のスタイルにおいては、作品にメリハリをつけるために大切なところは描きこむし、反対に作品全体で捉えたときに重要でない部分は簡単に描きます。

もし画面全体をみたままそっくり描けば、多くの作品にとって退屈なものになります。

配置や色彩により多少ごまかせるかもしれませんが、すべてにピントが合っているとどこを見ればいいのか分からず意識が散りますし、作品を通じて伝えたい主題や感性が届かないことに繋がります。

また、遠近感を出すためにも遠くのものは描きこまないというのも基本的な技術になってきます。

名画から描き込まないテクニックを考える

クロード・モネ「睡蓮」(1908年)

出典:東京富士美術館蔵 「東京富士美術館収蔵品データベース」収録 — https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/00426/

分かりやすいので言うと、画面右下の赤い3つのつぼみをご覧になってください。

つぼみの形や花びらの1枚1枚の様子が窺えます。

一方で、画面左上の同じ赤いつぼみは簡略化されて描かれています。

これにより遠近感の説得力が出ていますし、画面上部の空を反射している明るい水面→画面下の睡蓮の葉とつぼみの様子に目が行くように誘導され、みるべきところがはっきりと分かります。

ルイ=レオポルド・ボワイ「ミュスカダンとジャコバンの争い(別名:歌手ピエール=ジャン・ガラの逮捕)」

出典:東京富士美術館蔵 「東京富士美術館収蔵品データベース」収録 — https://www.fujibi.or.jp/collection/artwork/03548/

拡大してそれぞれの人物の顔のしわや立体感、服のしわの描き込みに注目してみてください。

こちらの絵は構図と明度によるコントラストで、右半分の人物たちにまず視線が行くよう計算されていますが、それら構図・明度以外にも描き込みが違います。

画面右の焦点が当てられているミュスカダンと呼ばれる貴族たちはよく細かいしわまで描きこまれていますが、それ以外の重要ではないところ(=暗く描かれている絵の主題にはそこまで関係しない箇所)は簡単に塗られています。

まとめ

私の作品では、絵の中でも特に大切な部分やテーマとなるところは細かく描き込み、反対に重要ではないと感じる部分はあえて大まかに表現しています。

そうすることで、全体としての分かりやすい完成度を保ちながら、画面にメリハリを生み、より良い作品に近づけると考えています。

具象絵画をご覧になる際には、どこがどのように描き込まれているのか、そんな視点から鑑賞してみるのも面白いかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

「オヴェール=シュル=オワーズの丘」