油絵はどのように描かれる?基本の工程と梅山尚土の制作スタイル

油絵の描き方や特徴を知ると絵の鑑賞の幅が広がりより楽しめます。

この記事では、いくつかの描き方を紹介するとともに私が販売している油絵がどのようにして描かれているかをご紹介します。

さまざまな油絵の制作方法

油絵は14世紀後半に生まれ15世紀に確立し、今に続いています。

数百年も経つ中で支持体(キャンバスやパネル)の作り方や素材、絵具の種類や特徴、描き方が多く誕生しました。

時代や地域、芸術主義、画家によって同じ油絵でも大きく描き方が異なるのも油絵の魅力のひとつです。

例えば「ひまわり」や「星月夜」で知られる「ゴッホ」はチューブ入り絵具から絵具を出し、キャンバスにそれを厚く塗るように比較的短い期間で素早く描き進めていきます。

一方、キリストの様なポージングの「自画像」で有名な「デューラー」は、制作時にはとても精密な下素描き(アンダードローイング)と呼ばれる下書き(正確には支持体に転写された線や陰影)を用意し、何層も絵具を薄く重ねるように木のパネルに何日もかけて描き上げていきます。

彼らの描き方の差だけでも大きな違いがありますが、近現代になれば油絵の描き方はますます多様性にあふれ、今日では十人十色の描き方が存在します。

好きな絵や画家を見つけたらどのような方法で描かれているのか調べてみると面白いかもしれません。

梅山尚土の描き方

ここからは私がどのようなプロセスで絵を描いているのかをご紹介します。

①下準備

まず、支持体(キャンバス)を用意します。

キャンバスは麻の布で張られたものを使用しています。(一部の作品ではコットン素材のキャンバスを使用しています。)

用意したキャンバスには「地塗り」という、支持体と絵具をよく結び付けるために必要な作業がすでに行われていますが、そのままでは表面に凹凸があるので、その上にさらにアクリルジェッソを使用して地塗りを行います。

白色のアクリルジェッソを薄く塗布し乾燥させる作業を5~10回ほど繰り返し、耐水ペーパーで研磨することで平坦できれいな画面になります。

正直手間のかかる作業ではありますが、作品のクオリティに関わる重要な作業なので手は抜きません。

②下準備その2

次に、地透層(インプリマトゥーラ)を作ります。

油絵は絵具をいくつかの種類の油で溶いて描きますが、その油が先ほどの地塗りに過度に吸収されることを防ぐ目的で、揮発する油で溶いた黄土色の絵具を薄く塗ります

地透層(インプリマトゥーラ)にはもうひとつの目的があります。

キャンバスは初めの状態だと真っ白。絵の最も明るい部分も真っ白。

そのため、明るい白色を残すように描くことは難しく、効率も悪いです。

なので、真っ白のキャンバスを黄土色でいったん中間色(明るくも暗くもない色)にすることで描きやすくします。

③下素描(アンダードローイング)

次に下素描(アンダードローイング)を行います。

いわゆる下書きです。

紙に書いたものをキャンバスに転写する方法が一般的なのでこの方法で行う場合が多いですが、転写をせず直接キャンバスに簡単に下書きを描いて終わらせる時もあります。

場合によりますが、私は紙にデッサンをしないで、写真を印刷したものを転写することがあります。

デッサンを尊重する考えの人から反感を買いそうですが、時短のためにそうすることがあります。

ちなみに私は、19世紀前半にカメラが開発され印象派の人たちが最新技術である写真を参考にして描いたのと同じように、スマホカメラと印刷機という新しいものを積極的に絵画制作に取り入れてもいいという考えを持っています。

④下層描き(アンダーペインティング)

下素描をもとに、ようやくキャンバスに絵具を塗っていきます。

不透明な層の上に透明な層を重ねる、深層光効果を狙った西欧絵画の基本原理をもとに、このパートでは、絵具を不透明(もしくは半透明)に塗っていきます。

⑤上層描き(オーバーペインティング)

下層描きが充分に乾燥してから、透明な絵具を何層にも分けて描き、最終的な色味に近づけていきます。

いくつもの層を重ねることで絵を観たときに色に深みが出て、アクリル画や水彩画とは違った油絵特有の美しさを得ることができます。

ちなみにこのパートを絵具の境界線が分からなくなるまで何回も繰り返すと「スフマート」というぼかし技法になり、レオナルドダヴィンチの「モナ・リザ」は完璧な「スフマート」で描かれたものとしても知られています。

⑥仕上げ

上層描きが終われば仕上げ描きを行います。

細かい部分の微調整や修正をして完成です。

⑦ニス掛け

美術展に出す絵や販売する絵は、その直前にニス掛けを行います。

油絵は表面上は乾燥しているように見えても中身は半乾燥状態で、完全に乾燥するのは半年から一年といわれているためです。

ニスを掛けることで絵具の層を空気から遮断でき劣化を遅らせることができるとともに、画面により艶が出て美しく見えます

さいごに

私が制作している絵は基本的にこのようなプロセスで描かれています。

段階ごとに絵具を溶く油の種類や量を調節したり、他の描き方を試すなど試行錯誤しながら満足いくまで時間をかけて油絵を制作しています。

そんな作品を実際に見て楽しんでもらえると幸いです。